9/24/2011

忙しいママにもわかるICRP勧告書 -その2


 (その1の続きです。ICRP勧告書へのリンクは、前回参照してください。)

今回のまとめ: ICRPは、被曝の最小化ではなく、最適化を、目標としている。
 


ICRPの勧告の根本は、放射線からの住民保護は、オプティマイズ(optimise)するべきという考えです。

Optimisationって言葉は、暫定日本語版では、「適格化」と、訳されてました。黄金熊なら、最適化って意訳しますが、どっちにしても、「放射線保護を適格化する」とか「放射線保護を最適化する」って、一体なんのことじゃー?って、思いますよね。

どういうことかいうと、汚染地域の住民を放射線から守るためには その地域の さまざまな事情を考慮して 出来うる限りの最善最適の処置をとる、っていうことです。ICRPの勧告を理解するのに、とっても大切な、コンセプトです。 

なーんだ、そんな、あたりまえのことか、思われるかもしれません。でも、じつは、大切なのは、この勧告の基本的な考えが、何であるか、ではなく、何でないのかってことなのです。特に、注目すべき点は、この勧告は、被曝をoptimize(最適化)すること を奨励しているのであって、minimize(最小化)することを奨励しているのではないと、いうことなです。 このあたりが、ICRP勧告は、推進派の立場のものだと、一部から、批判される所以なのかと思います。

住民の被曝を最小にすることを目指さなくともよいとなれば、社会的事情だとか経済的事情だとか理由をつけて、住民が被曝し続けるのをほっておかれるような事態を招きかねません。そこで、ICRP勧告は、一応、最低限の被曝の限度は守るようにに、付け加えています。つまり、汚染地の諸事情に考慮すれば、どんなに高い被曝量でもかまわない、とは、いっていないのです。住民の被曝が最悪でもこの程度がこれぐらいまでなら、と、いう基準は示しているのです。その上で、その土地の事情にあった放射線防護の対策を取れ、っていているのです。 

で、次回は、このICRP勧告の、基準についてまとめようと思います。

9/21/2011

忙しいママにもわかるICRP勧告書 -その1

 汚染地で、これから、ながーく生きていくことになるかもしれない日本人の必読書を紹介します。


ICRPのPublication 111いう、勧告書です。



ICRP は、International Commission on Radiological Protection(国際放射線防護委員) のことです。 この機関から出されたPub.111 という勧告書の暫定翻訳版が、日本アイソトープ協会のサイトにあります。 (日本語版は、ここからここからPDFファイルとして、ダウンロードできます。) 原文は、ICRPのサイト から、ダウンロードできます。

ICRPは、震災後の原発事故による日本の非常時に対応して、普段は有償のこの文献を無償で配布しています。無償版には「あまりにも多くのものを失った日本の皆さんのために」と、添え書きがしてあります。 ありがたい。

でも、このありがたい勧告書は、専門性が高くて、一般人には、とっつきにくいです。今の日本が考えるべき情報が満載されているのだけど、今の日本では広く利用知られていない、討論されてない、生かされてない、ようです。 で、自分も専門家ではないのですが、自分も勉強しながら、なんとか普通の人が、わかるように、かいつまんでまとめてみようとおもいたったわけです。 忙しいママにもわかるICRP勧告書のまとめ を、めざします!

で、どんな勧告書かというと、日本語の暫定版の仮題は、「原子力事故又は放射線緊急事態後における長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用」ってことなんです。 
小難しいタイトルですね~。 (邦訳が、悪いわけではないです。因みに、原文タイトルは
Application of the Commission's Recommendations to the Protection of Individuals Living in Long Term Contaminated Areas After a Nuclear Accident or a Radiation Emergency です。)

どういうことかっていうと、実は、ICRPは、2007年に、それまでの放射線防護の勧告を大幅に改訂したのです。この最新の2007年度勧告は、Publication 103として、しられています。これも、ICRPのサイトで手にはいります。(全文は有償ですが、一部無償で、ダウンロード可です。)で、今回の勧告書(Publication 111といわれるもの)は、2007年度勧告を 汚染地に長く住むという状況に、どう適用すべきかってことで、書かれたのものなのです。

つまりですね、この勧告書が、原発事故後に無償でいち早く日本のためにと配布された背景には、世界の専門家の間では、日本人が汚染地で長期的に生活しなければならないような状況に陥るだろうと、早い時期から危惧されてたってことがあると思うのです。 この現実と、まず、向き合わないことには、何もはじまりません。

まずは、今回は ここまで。。。 (つづく)


P.S.  ちなみに、ICRPはどういう組織かって疑問に思ってられる方は、お手数ですが、ネットで検索なさってください。 賛否両論ですが、一応、世界的によく知られて、それなりの評価をうけている非営利団体です。原発推進派の組織だと、批判されることも多いようです。 そういう機関ですから、この勧告に、脱原発バイアスが、かかっていることは、ないと考えていいと思います。

9/15/2011

放射能汚染 何が今問題なのか

放射能汚染って何が問題になってるの~? という方に。

8月27日放映されたNHKの週刊 ニュース深読み「どう処理する?“放射性”がれき」
という番組(リンクをクリックしてみて)で、わかりやすく、今なにが、どう問題で、何をしなければならないのかって、素人にも、分かり易くまとめて説明してくれてます。 黄金熊のこのブログでも以前紹介した、東大の児玉先生も、出演して、提言なさっています。

日本のみなさん、とくに、東日本の皆さん、ひとごとでは、ありませんよ~。
しっかり考えましょう。

9/08/2011

ありえない現実

少し前にかかれたものだが、救援小児科医の山田真氏の書いた記事を読んだ。 山田真氏は 「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」の 代表。医療被曝問題に長く関わった小児科医で、八王子中央診療所理事長であられるらしい。

彼は、これまで幾度か「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」主催の福島での健康相談会に協力なさったのですが、その相談会にきた福島の親御さんたちについて、書いています。福島の一部では子供の被曝を心配している親に対しての風当たりはかなり強く、個人のレベルでは、なかなか声を上げるのも難しい、ということらしい。

以下、少し長いですが 山田氏の記事からです。

話を沢山聞くうちに全く予想しなかった事実に出会う。それは例えば「学校給食の食材はすべて福島 産のものを使っている。福島産でない、安全な地域でとれた野菜を使ってほしいなどと要求するとバッシングされる。」「保育園で福島産の牛乳を飲んでいる。 他の牛乳に変えてほしいと言ったら怒られた。では、うちの子は飲まないようにさせてくれと申し出たが一人だけそんなことはできないと言われた。」

もともと、福島ネットワークからわたしに「一度福島に来てほしい」と言われた六月のはじめ、「福島市内のお医者さんに子どもを連れて行って、〝鼻血がよく 出るが放射能のせいではないか〟などと相談すると笑いとばされてとりあってもらえない。だから来て相談に乗ってほしい。」と聞かされていたから「福島市内 のお医者さんの多くは、〝放射能は心配いらない。気にしすぎはかえってからだによくない。〟と言って口裏を合わせることにしたのだろう。 それは原発安全神話が崩壊したあと新たに放射能安全神話を作り出すために医者も協力することにきめたということなのかな。」と思っていた。 しかし、現実はそんな範囲にとどまるものではないようだ。福島市があるいはもしかすると福島県全体かも知れないが、「福島県は放射能に汚染された地域」と いうレッテルをはられないために、放射能は安全、福島は安全と声をそろえて言わなければならない状態に追いこまれているように私には見えた。

福島産の野菜は安全だということを自ら示すためにあえて子どもたちにも地産の食材を与えているようにも思われる。そして「それは危険だ。やめた方がい い。」と異議を唱える人は地域でバッシングされるから口には出せない。そういうことが地域の中で人間関係をこわしたり家族の中に対立を持ちこんだりしてい る。そんな切ないことが福島では起きていて、そうしたことは報道もされないから福島県外の人はほとんど知らない。

「子どもを放射線から守る」と銘うったネットワークを立ち上げた以上、「福島の子どもにはせめて安全な食 材を食べてもらおう」とアピールする責任がわたしにはある。福島の野菜などは国が買い上げたり国会の食堂で使われたり、内部被曝をしても、まあ安全と言わ れる60歳以上の人たちが食べたりするようにすればよい。既に相当な量の被曝をしている福島の子どもたちが率先して〝汚染の可能性の強い〟食材を食べてい るのは、低線量被曝の人体実験をしているようなものではないか。
 
さて、相談会はその後2回行われたが3回目の7月の相談会では「この相談会に来たことがわかると地域でバッシングされる。」とおびえながら語る人もいて一段と厳しい状況であることがわかった。福島を知り福島のことをみんなで考えてほしいと切に願う。


山田氏が書かれているとおり、あまりに切ないです。こんな現実ありえない。黄金熊も小学生の親です。 この記事よんで涙がでてきました。  どんなに周りに言われようとも、自分と子供のためには捨て身で、立ち向かえという人もいます。 でもそうできない事情もあります。そうできない弱い人だっています。 子供のために立ち上がらない親がいけないというような次元の問題ではありません。人間は社会的動物です。すべて自己責任だという人もいるでしょうが、そういう人は、とても認識が甘いとおもうのです。一人で生きられる人はいませんから。 これぞという命にかかわる緊急時には、組織や個人の諸事情やキャパシティにかかわらず、人を、特に子供を、守るという機能が働けなければ、その社会は、健全とはいえないでしょう。 

こんなありえない、あってはいけない現実がある日本、おかしいです。 ほんとうに、おかしいです。 何かが、とんでもなく、狂っています。  少しづつ、危機意識を持っている人は増えているとおもいますが、良識のある社会のリーダーといわれる人たち、または、オピニオンリーダーが、やはり、矢面にたたなければならないとおもいます。彼らには 歴史と、自分の良心が審判者となるでしょう。


子供のことを心配しているお母さんお父さん。 がんばってください。 

わたしも、私の出来ることをさがします。 ひとつは、躊躇せずに、相手が不愉快になろうがなかろうが、気にせずに、 放射能汚染怖いね。 原発収束してないね。日本政府東電の対応問題だらけだね。 と、話題にすることです。 これくらい、黄金熊でも出来ます。 放射能汚染問題だーという人が、増えていくことが肝心だとおもいます。

現実を直視しなければ、解決策だってはじまりません。 エリートが 無知な国民のために、陰で、政策を操り社会の繁栄をささえるというような従来のやり方では、この未曾有の危機は乗り越えられないと思います。 正面きってこの問題に取り組まなければ、本当に日本は終ってしまうかもしれないと、黄金熊は、そう思いはじめました。 まだ、まにあう。 危機感をもって、恐れずに、この問題に国を挙げて取り組めば、解決できると確信してます。