2/17/2012

不幸中の不幸:2月15日の原発事故調査委員会から

東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(通称、事故調)の第4回委員会が2月15日にありました。衆議院TVのサイトで、その模様をネットでみれます。ここです。http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php.

班目春樹・原子力安全委員会委員長と 寺坂伸昭・前原子力保安院長が 参考人としてよばれました。 東電とならんで、今回の事故をひきおこした最大の責任を負う人たちといってもいいと思います。この人たちを呼んだ事故調は、いわば国民(国会)の代理として、事故の徹底的解明と責任を追及をするという任務を負っています。事故調が、どのようにこの任務を果たしているのか、なるだけ多くの国民が、確認することが大切です。

先日は、みんな勉強しましょうと、いったわけですが、このビデオは、とても勉強になりますよ~。3時間と大変長いですが、時間がある方は見てください。一気に見るのは、さすがに大変なので、何回かのわけて、食事のしたくをしながら聞き流すとか。 

新聞にも、15日の委員会のついてちょっこっとだけ出てましたが、3時間におよぶ質疑応答をまともに報道できるはずもなく、記者が自分が気になったところを、つまんでちょっと報告したぐらいにしか、なっていません。自分で、ききましょう。まったく違う理解になるかもしれませんよ。

私個人が、15日委員会の質疑応答から、学んだことを、とりあえず、3つだけ、かきます。

1. 原子力安全委員会・保安員が、SPEEDIを住民の避難のために活用しなかった理由は、SPEEDIは、避難をためには役立たないからだそうだ。(じゃあ、なんで血税を100億以上もかけて、役立たない道具を、つくっていきたのか ということになるが。)

2.今回の事故での、放射物質の放出量は、想定された事故で放出されうる量との1万倍(!)だった。 なぜ、おこりうる想定上の放出量が4桁も甘かったというと、そんな実際にありうる放出量を考えたら、そもそも原発を建てることができなかったから。  

これまで立地条件の審査につかわれてきた想定し得る非常事故時の放出線量とは、実際に想定しうる危険を踏まえたわけではなく、立地できるようにレベルになるように設定されたきたと、班目氏自身が認めた。1960年代以来、原発の立地を許すことができるように甘く定められた起こり得る事故の規模が見直されることはなかった。そして、立地が許されるべきでなかった原発が建てられてしまっていることが、示唆された。

3.ストレステストが、原発の再稼動の是非を問うテストとして、扱われるべきないと認めた。だが、実際に、ストレステストが、再稼動を容認する根拠として、扱われていることについては、うやむやであった。


なによりも、私が、確認したことは、次のこと。

運命の2011年3月、班目氏と寺坂氏が、それぞれ、原子力安全委員会委員長・保安員長を務めていたということは、不幸であったとおもう。 

班目氏と寺坂氏には、責任逃れと取れる発言が目に付いた。 班目氏は、シビアアクシデントは、すべて、事業者の責任であると、言い放った。 被曝の危険には、閾値はないとみとめたものの、彼らが、事故初期当時、本気で、自分のすべてをかけて住民を守ろうとした形跡は、残念ながら伝わってこない。 今も、福島に高汚染地に残されている子供たちよりも、自分の立場を守ることに、全力を尽くすのだろうか

2/14/2012

忙しいママも勉強しましょう!


ママたちが、忙しいのはわかってます。わたしも、そうです。でも、ちょっとだけ放射能や原発について勉強しませんか。 一日15分でもいいです。

どうして、放射能について 勉強するのか? 自分と自分の大切な人たちを、よりよく愛するためです。役立つ人間になるためじゃないです。自分の知的好奇心を満たすためでもないです。専門性をつけてキャリアにつなげるためでもありません。脱原発また原発推進の活動を支えるためでもありません。 自分と愛する人たちのため、自分自身で考えて判断ができるようにするために、勉強するのです。愛する人がいるなら、勉強してください。

でも、勉強なんかしたくない。そんな暇ない。ややこしいこと嫌い。何を勉強していいのかもわかんない。 誰か、簡単に、3分だけ読んだり観たりすればわかるように、説明してくれない? いや、説明もいらない。何をどうするべきかだけ、教えてくれない? と、言いたい方へ。

大概のことは、それでいいとおもいます。 

でも、放射能は違うのです。勉強するべき課題です。なぜかというと、感覚とか本能とか経験とかで、把握できない課題だからです。 専門家といわれる人たちも、万人に通用する正しい答えは、分かっていないのです。自分と自分の愛する人たちにとっての答えは、自分で判断するしかないのです。で、ないと、運は天任せとなっていしまいます。それでいいというなら、かまいません。でも、ママって、子供にかかわることを他人任せにはしたがらないものです

で、よーし、ちょっと勉強してみよっかと思っていただけだ方へ。 私は、研究職に長く就いてきた人間でいわば勉強のプロですが、ママたちにシェアしたいことがいくつかあります。

1)勉強とは、自分が「何を知らないのか」を学ぶことです。  私の専門家の定義は、その分野について自分が何を知らないかを、正確に把握している人間です。勉強すればするほど、ふつう、わからないことが増えていきます。すべてわかったーと思ったときは、要注意です。

2)何を勉強したらいいのか? どこから、手をつけたいいのか分からない人は、自分が、一番気になること知りたいことを質問として、書き出してみてください。「1ベクレルって、どういうこと?」 「魚たべても大丈夫?」 「2号機で、温度上昇って、なんで心配している人がいたの?」「ストレステストって何?」「何で東電は、電気代値上げが必要といっているの?」 などなど、なんでもいいのです。まず、ひとつ。そうしたら、その質問の答えを、自分でみつける。その過程が、勉強です。

とりあえず、自分の気になる課題について、文献を検索してみてください。その課題の本などを図書館から何冊か、かりてきて、ぱらぱらページをめくってみる。読みたかった本があれば、よんでみる。それでいいです。新聞やTVや雑誌でも、始めはいいですが、そこから、元となる情報をさがしましょう。ひとつの質問について自分なりの答えをだすのに、最低三つソースを探しましょう。

3)残念ですが、たとえ自分が選んだ課題であっても、勉強は、つまらないことが多いです。放射能については、面白いから、勉強するんじゃないんです。でも、つまらなくて当たり前さと思うと、気が楽になります。もう我慢できない。と、思ったら、何のために勉強しているのか、今一度思い出してください。愛する人の顔を思い浮べるのも、いいです。

2/07/2012

IAEA、ストレステストについて。


また、随分日が空いてしまいましたが、再開します。仕事が年末までいそがしかったのが、主な理由ですが、それについては、また後で書くこととします。

あっという間に、私を取り囲む世界がすっかり変わった2011年は、おわり、また3月が訪れようとしてます。世界の誰も信じない、冷温停止を宣言して、日本政府が笑いものになったのが、2011年の終わりでした。正確には、「冷温停止状態」というわけの分からない造語を作って、「冷温停止状態」宣言したわけですが、これは、あまりにも馬鹿馬鹿しいので、ただひたすら唖然としました。日本政府や東電って、そこまで落ちるのか、と呆れたのは、黄金熊だけではなかったはず。

それだけではない。政府は、原発再稼動を正当化するために、ストレステストなるものを、考案し実施しました。これも、「冷戦停止状態」に負けずとも劣らない、妙案です。(実態は、非現実的なシュミレーションによって、原発は運転しても安全と、アピールするものです。) でも、さすがに、日本政府主導のストレステストなるものでは、誰も信用してくれないだろうとは想像がついたらしく、IAEAにお出ましになったもらい、ストレステストをIAEAお墨尽きということにしようと、もくろんだようです。まずは、国内で各分野の専門家と国民(とくに原発周辺住民)を含めて徹底的な論議を行ういう当たり前の過程はさけて、日本人は国際機関っていう名のつくものに弱いからとこれで丸め込めるといわんばかりの、国民をなめきったような対応ですね。 


そこで、IAEAについてさっとおさらい。 International Atomic Energy Agency(IAEA)は、核兵器開発の監視がメインの国際機関です。その本の片手間に、原子力エネルギーの推進もしている機関です。ここで、大切なのは、IAEAは、原子力の平和利用(つまり、原子力発電)を、推進することを目的として、設立した機関だということです。
以下は、IAEAの定款(第2条 目的)です。
The Statute of the IAEA (ARTICLE II: Objectives)
The Agency shall seek to accelerate and enlarge the contribution of atomic energy to peace, health and prosperity throughout the world. It shall ensure, so far as it is able, that assistance provided by it or at its request or under its supervision or control is not used in such a way as to further any military purpose.

これによれば、IAEAは、核エネルギーを推進拡大しようっていうのが、大前提にあるのです。だから、そういう機関が、原子力発電を規制をすることは、基本的にできません。 IAEAにとっては核エネルギー無しで、豊かな世界を作るという選択はないのです。 IAEAにせいぜい出来るのは、核エネルギーを推進をなるだけ妨げないようにしつつ、安全を出来るだけ確保するように努める、ぐらいです。 安全を確保することを目的として、その枠内で核エネルギーを推進をかんがえる というのではないのです。ほんのちょっとの違いのように、聞こえますが、全然違います。 まず、原発ありき、なのですから。 だから、そういう、IAEAのお墨がついても、安全を第一としてほしい住民には、あまり意味がない。 そう、考えるのが妥当かと思います。


で、ストレステストは、一応、IAEAのお墨をつけてもらったわけですが、その、IAEAでさえ、手放しに評価しているわけではなく、住民の意見を反映させることなどを盛り込んだ勧告を同時に出しています。 政府と東電は、とにかく、これで、国際的にもOKしてもらったってことにして、原発の再稼動を強行しようという感じ。この場に及んでも、根本的に、福一の事故の意味を理解していないのか、と正気を疑います。 




追記: ストレステストの意味のなさについては、外国特派員協会での記者会見で、後藤政志氏らが、分かり易く解説なさっています。(日本語です)。 なぜ、これが、意味のないテストなのか技術的論理的根拠を、知りたい方は、どうぞ。


Goto & Ino, "Is the Japanese Government Cheating on its NPP Stress Tests?"