3/30/2012

気が滅入るニュース

東京電力福一原発の2号機は先月にも温度計の不良などでひやひやさせらましたが、先日、内視鏡による調査の結果のより次のことが分かりました。

1)格納容器の底から60センチしか水がたまっていない。
2)格納容器内部の放射線量は、最大で1時間当たり72.9シーベルト。

このニュースの意味するところは、こう理解しています。(下記にあるNHKのニュース解説参照。)

放射物質を閉じ込めておくはずの格納容器はすでに破損している。専門家によれば、原子炉を冷やすために注入している水がほとんどたまっていないことから水が大量にどこからか漏れているとみられる。高放射線量のため、そのような環境で作業が遠隔で出来るような新しい技術をまずは開発しなければならない。廃炉は東電の想定どおり進む見込みはない。

昨年から国内外の専門家の間で懸念されていた事態が確認されたわけで、今更驚くことではないかもしれないけれど、やっぱりそうなのかと、心が萎えました。 つまり、汚染された水は環境にじゃじゃ漏れ続けているが、注水を止めるわけにもいかず、かといって、こういう状態が改善される見通しもたっていない。 既存の技術では、対処できない。 これからも何ヶ月も、あるいは何年も、この状態が続くのだろうかと思うと、眩暈がします。目下のところ、現状維持が出来ることの全てだということです。 そして現状維持とは、環境への放射放出がストップした状態ではなく、着実に汚染を悪化させることでしか成り立たない状態なのです。 

また、燃料は容器内にたまって60cmの水でかろうじて冷やされている東電はみているようですが、一部がすでに格納容器を突き抜けているということはないのでしょうか。素人にはわからないのですが、かといって、東電のいうことも信用できないし。 記事によると、燃料が核の容器内にすべて残っていると確認できたとは、書いていないし。もし、格納容器をつきぬけているのだとしたら、なすすべもなく、容器の破損箇所をなおして、水を満たして燃料を取り出すという、水棺のシナリオは、考え直さなければならないでしょう。
 
1号機や3号機にいたっては、内視鏡で検査するのも困難な状態。4号機の使用済み燃料プールは、地震などで、プール自体が壊れたり中が破損した場合危機的状況になることは、十分に「想定内」であるという状態。また福一には、共用プールには、行き先がない6千本以上の使用済み燃料もある。 これまで以上の大惨事が、起こりうる、のである。 

悪夢のよう。
思考停止に陥りたくもなる。 


この状態で収束宣言し、避難区域住民の早期帰還を促す日本は、無責任極まりない。 東電や政府や政界やマスコミをはじめ、今の日本を担っているリーダーたちは、必ず歴史に裁かれる日が来るでしょう。 そして、そういうリーダーたちをゆるしてきたわたしたち国民も。 


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2号機 格納容器内の映像公開(NHK Online 327 19:05更新)

格納容器の底から60センチしか水がたまっていないことが明らかになった東京電力福島第一原子力発電所2号機の格納容器の内部を撮影した映像が公開されました。 しかし、映像からは、損傷箇所の特定につながるような情報は得られず、今後の廃炉作業は難航が予想されます。

福島第一原発の2号機では、格納容器の内部の状況を把握するため、26日、工業用の内視鏡を使った2回目の調査が行われ、容器内の水位が底から60センチしかないことが分かりました。 前回の調査では、内視鏡の長さが足りず、水面が確認できませんでしたが、27日、公開された映像には、内視鏡を容器の貫通部から壁に沿って6メートルほど下に降ろすと、水面が現れました。水中では水は濁っておらず、白っぽい細かい浮遊物が漂っていましたが、見た目から溶け落ちた燃料ではなく、容器の壁などからはがれ落ちた塗料やさびとみられるということです。 一方、今回、事故後初めて、直接、格納容器内部の放射線量の測定も行い、最大で1時間当たり72.9シーベルト=7万2900ミリシーベルトと非常に高い放射線量を検出し、東京電力は、格納容器に溶け落ちた燃料が影響しているとみています。 福島第一原発の廃炉に向けては、格納容器の損傷か所を特定して修理し、水を満たして溶け落ちた燃料を取り出す計画ですが、今回の調査では損傷箇所の特定につながるような情報は得られませんでした。容器内の放射線量が高く、水位も予想よりかなり少ないことが分かったことで、今後の廃炉作業は難航が予想されます。

【調査で何が分かったのか】
今回の調査では、これまでコンピュータ解析による推定などに頼っていた、格納容器内の様子が直接観察できたという収穫があった一方で、水位が予想よりかな り低かったことで、容器内に溶け落ちた燃料が十分、水につかっているのか、懸念を示す見方もあり、今後の廃炉に向けて、格納容器内の状態をいかに正確に把 握するかが課題になっています。

格納容器内の状態については、これまで温度計や圧力計の値、それにコンピュータ解析などによって推定するしかありませんでしたが、今回、2号機について、格納容器の貫通部から内視鏡を入れて直接、内部の様子を観察することができました。 高い放射線量などによって、鮮明な映像は撮影できませんでしたが、内部の様子が分かり、見た範囲では大きな損傷は見つからないなど、東京電力は一定の収穫があったとしています。一方で、調査で判明した格納容器内にたまった水の水位は東京電力が予想していた3メートルに比べ、大幅に低い60センチほどしかなく、容器の中の状態をいかに把握できていなかったかを露呈しました。東京電力は、水温などから「燃料は冷やされていると考えている」としていますが、水位が予想よりかなり低かったことで、容器内に溶け落ちた燃料が十分、水につかっているのか、懸念を示す見方もあります。 内視鏡による調査は、2号機と同じようにメルトダウンした1号機と3号機については、放射線量の高さなどから見通しが立っていません。今後の廃炉に向けては、格納容器の損傷か所を特定して修理し、水を満たして溶け落ちた燃料を取り出す計画で、格納容器内の状態をいかに正確に把握するかが、重要で大きな課題となっています。

毎時数トンの水が漏れる穴か隙間が
福島第一原発2号機の格納容器内部の映像について原子炉の構造に詳しいエネルギー総合工学研究所の内藤正則部長は「水位が60センチだったことから、格納容器の破損した部分は、60センチより下に位置していると考えられる。
原子炉を冷やすために注入している水がほとんどたまっていないことから、1時間当たり数トンの水が流れ出ているとみられ、格納容器かその下部にある圧力抑制室に一定の大きさの穴か隙間が開いていると言える」と指摘しています。そのうえで、溶けた落ちた燃料の状態については「水温がおよそ50度だったことから、燃料は水につかっていると考えられる。 燃料の一部が水面から顔を出しているかもしれないが、水蒸気で冷やされていると思われる」と分析しています。また格納容器内部で最大で1時間当たりおよそ73シーベルトの放射線量が測定されたことについて「放射線量が水面に近づくにつれて高くなっていることから、水の中に溶け落ちた燃料がたまっていることの証拠だ。かなり高い放射線量なので今後、内部の作業のために使う機器などの放射線対策にも手間がかかるとみられ、廃炉作業はかなりの困難が予想される」と指摘しています。

3/23/2012

日本の専門家のみなさまに伝えたいこと

今回の東電原発事故は、事故の解析から被害の分析と予測にいたるまで、事故の意味を理解するのに、専門知識が必要た。だが、今回の原発事故後、日本の学者や専門家の声があまり聞こえてこない。 これからの事故収束や放射汚染政策をたてるのに、専門家が英知を分かち合わなければならないのは、専門家自身が一番よく分かっていると思う。声を潰そうという勢力もあるのだろうし、陰ではいろいろなところで活躍があるのだと思う。表に出てくることが全てとは思わない。だが、果たして全力投球で問題に向き合ってくれているのだろうか。専門家が立ち上がらなければならない今、すべてをかけてくれているのか。 自分はもうできることは全てしている、という専門家の方もいるだろう。だが、そういう人は、実は、ほんの一握りではないのだろうか。

If not you, who?   If not now, when?   

わたしはこの言葉を専門家と自負している人に投げかけたい。原発事故や放射汚染と関連することで、少しでも貢献ができるなら、行動に移してほしい。残念だが、原発や放射能の問題は素人にはよく理解できない。専門性が高すぎる。わたしのような素人が付け焼刃の知識で語るべきではない部分が要所にたくさんある。専門家にがんばってもらうしかないのだ。

アメリカ人の原子工学部の教授が、次のような感想を漏らした。

日本政府や東電はデータを隠しているとしか思えない。また次々に明らかにされるいるように、政府や東電の原発事故に対する想定の甘さが目についた。政府の対応のまずさや東電の隠蔽については、どこの国の政府や産業にもありがちなことで、日本ならもう少し違った対応があるかとおもったので少し意外ではあったが、まったくの想定外ではなかった。実は、自分が一番驚いたのは、日本の研究者の対応だった。当初、日本政府や東電の対応について、必ず日本の大学や学者や専門家の間から厳しい批判や質問が矢次に出てくるに違いないと思っていた。でも、そうではなかった。信じがたい。本当に意外だった。

彼は私の目をじっと見つめてそう言い、それでは駄目だよというかのように、首を何度も横にふった。 わたし自分のことを言われているわけでもないのに、いたたまれなくなった。

批判の声をあげている学者も専門家もいますよ。あまりマスコミにとりあげられてはいなけど。 

わたしは、日本の専門家をかばうかのように、力なくつぶやいた。でも、思った。声が届かないのは、マスコミのせいだけではないのだろう。 

教授は、原子エネルギーについては、それ自体は、反対でもなく賛成でもない。ただ核のごみの処理の問題も解決や、原発の稼動に伴う危険を妥当に評価もせずして、原子力エネルギーを追求するのはどうかという意見はもっている。政治色のない技術屋タイプの人だ。米国の名門大学の長年研究してきて、彼も彼の教え子も核科学の最先端で活躍している。そうような彼が日本の学界や専門家を見る目は冷めているようだ。

日本の原発、放射能、各政策など関連分野の専門家の方たちに、今一度問いたい。 If not you, who?   If not now, when?     課題は山積みだ。 反原発だろうが、推進派だろうが、中立派であろうが、個人的な立場はどうでもいい。311後の日本を立て直すためは、様々の意見を持つ専門家たちが徹底的に自分たちの持つ限りの知識と経験に基づいて議論しながら、政治家や行政や市民とともに、答えを模索するしかない。 

この一年ふりかえっていみて、日本の専門家という勢力が、その能力を最大限に発揮して震災後の日本の舵取りに貢献したとはいえないとおもう。日本には優秀で勤勉な科学者や技術者がそろっていることは、世界の知るところである。この未曾有の危機に際し、この優秀な専門家集団(とくに、大学や研究機関にいる中立の立場のはずの専門家たち)が威力を出すだろうと期待した同業者は少なくない。だが、いまのところその期待は裏切られた感がぬぐえない。いくら専門家が声をあげたところで、耳を傾けてくれないといって、あきらめてもらっては困る。耳を傾けないなら相手を、傾けさせることも、専門家の仕事だと思ってほしい。 今年こそは、エキスパートが活躍してくれることを、心から願っている。







3/14/2012

脱原発へのメッセージを再考する


東電原発事故(黄金熊は、福島原発事故という言い方をボイコットすることにしました) のような、大惨事を引き起こしながら、性懲りも無く、またせっかく停止している原発を、再稼動しようという動きあります。 電気が足りなくなるとか、原発交付金なしでは地方経済が崩れるという脅しや、原発事故の被害の過小評価するプロパガンダなど、あらゆる手を使って、推進派は、原発を守ろうとしているように思えます。推進派は利権の塊か~! と、今まで、腹を立てていたのですが、最近、そこまでこだわるのには、東電や原子力村の利権以外に別のところに理由があると思うようになりました。

私は、是非はともかく、日本が原子力技術にこだわるには、安全保障の問題が関わっているからだと、思います。これまで、原子力発電が、日本の核技術の開発の基盤だったわけです。原発を失うということは、核技術を保持する理由を失うようなものです。これは、困る、と、思う勢力があると思います。日本は、核兵器保有は許されない許さない国ですし、国民も敏感です。安全保障にも関わる原子力技術の追求を、電気の追求と置き換えてきたのだと思います。(これは、陰謀論とかではなくて、国策として、原子力技術を持つという選択を日本がしてきたということ。最近、米国の核安全政策に長年かかわってきたアメリカ国防省の元高官による講義などを聞いているうちに、こう推論するようになりました。もちろん、この件については複雑な事情や歴史があるかと思いますが、ここでは、原発への固執の理由が一部の人間の利権以外にもあるだろうということが、ポイントです。)

私の推論ですが、推進派勢力の根っこは、原子力技術推進であって、原発推進とは限らない。だが、現体制下、原発で潤っている利権既得者が、原子力技術推進派を、原発推進派として、うまく取り込んでいるとおもいます。言い換えれば、核技術を保持したい勢力が原発がなければ日本の原子力技術がストップしてしまうと杞憂しているという、利権既得者には好都合な状態になっているというわけです。(特に、誰が意識的にそう謀ったというわけではないが、実態として、そういう構図になったいると思う。)

それで、考えたついたこと。脱原発の運動を進める上では、原子力技術開発と原子力発電を、切り離して論議する。 原発をやめろという人の大部分は、原子力技術をもつことを必ずしも反対しているわけではなく、原発という危険な代物が稼動していることに反対だと思うのです。一方、原発の再稼動にあくまで固執する勢力は、必ずしも電気を安定供給する手段としての原発にこだわっているわけではなく原子力技術そのものが大切だという立場があるのではないでしょうか。だから、脱原発しても、さらなる原子力技術を追求できる方向や可能性を具体的に考えたり示していくことも大切なのではないでしょうか。本当に原子力発電がないと困る利権者は、一部だろうとおもっています。

脱原発を願う人も これから、原発に代わる原子力技術の追求をどうしていくのかということを、別問題として考えていきませんか。 もちろん、核エネルギーそのもの反対という人もいますし、そういう意見も、原子力技術の是非という根本的な課題として、国民が徹底的に考えるべきことです。 でも、原発反対=核技術反対という構図の中では、「とりあえず危険な発電所は停止した上で、課題を議論しましょう」という極真っ当な意見が、原発利権者のみならず、核技術の支持者と、両方からの反対にあいます。戦略的に不利だと思います。わたしは、とりあえす、原発を止めることを最優先すべき目標にすればいいと思います。 





3/05/2012

核種検査の必要性

政府は、汚染地で、セシウム以外の検出は、これまであまり積極的にしていない(または発表していない)ようです。とても、おかしいと思います。以下、調べるべき理由です。

理由(1)アルファ線やベータ線をだす放射物質の内部被曝の危険度は、ガンマ線より格段に上です。被曝を抑えるためには、汚染地の環境に特に有害なアルファ線ベータ線核種が存在するか、調べることが大切です。

理由(2)核種検査は、被曝のリスク を、見るためだけではありません。(特に初期における)核種の分析は、福一でなにがおこったのか事故の解析に繋がります。事故の以前にだいたい どんな核種がどれだけどこにあったのかは、見当できます。それに対し、実際に、環境にもれた核種を詳しくみることで、何がおこったのか、推察できるのです。

なぜ、政府は、もっと積極的に検査しな いのか。知りたくないからではないかと、勘ぐってしまいます。 または、隠蔽しているのか。でも、いつまでも、無視したり、隠しとおせることでもないのにね。そのうち、海外のメディアや機関に、大変な量のアルファ線 ベータ線物質が広範囲に飛んできていたとすっぱ抜かれるのではないのかな~。

たとえば、最近、Environmental Pollutionという学術雑誌で、東大の小豆川 見氏らが、去年四月に測定した放射物質の解析結果を報告しています。福島第一、原発付近、そして35km離れた飯館村を測定してあります。(これは、以 前、去年の夏ごろに、おしどりマコさんが彼女のブログでスクープしたいたことです。その時点で、彼女は、研究者によって、ベータ崩壊してプルトニウム 239となるネ プツニウム239が、測定されたと報告していました。秋に、こっそり政府がプルトニウムが飯館村を含む福島の各地で検出されたことを発表する随分前のこと です。)プルトニウムが、広範囲で検出されたことを、政府が認めたあとで、今更という感はありますが、やっぱり飯館村には、プルトニウムや様々な核種が、 飛んでいっていたね、という感じでネットでは情報がまわっています。この論文には、核種の分析も載っているので、福一で何が起こったのか考察したい専門家の方にも、有用な情報があるやもしれません。(この論文のabstractは、このエントリーの一番下に貼り付けておきました。)

また、去年末ごろから、南相馬市(福一から35kmぐらい)で、有志の住民により超高濃度の汚染土(セシウム134と137の合計で、キロあたり100万ベクトル超)が発見されました。 ネット上に、神戸大学の山内教授による解析の報告書もあります。(先日NHKでも、30km圏以内で、キロ当たり400万ベクトルを越す汚染落ち葉が報告されてましたから南相馬の、100万ベクトルに濃縮された汚染も、確かなのでしょう。) こんなとんでもなく高い汚染物質がみつかったのですから、アルファやベータ線核種の調査もするべきだと思うのですが、行政は何もしません。南相馬の市議の大山氏のブログによれば、さらなる核種検査の調査を要請したのですが、市は、動かないようです。マスコミも、割とだんまり。確かに、100万ベクトル超の汚染物質が警戒区域の外(政府が人が住んでいいよといっている地域)にあるとすれば、とんでもない事です。とりあえず、市が動かないなら、国の指導で応急措置が取られなければならないような非常事態だとおもうのですが。。。 

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Deposition of fission and activation products after the Fukushima Dai-ichi nuclear power plant accident (Environmental Pollution, Volume 163, April 2012, Pages 243–247)

Authors:  Katsumi Shozugawa, Norio Nogawa, and Motoyuki Matsuo

Abstract:  The Great Eastern Japan Earthquake on March 11, 2011, damaged reactor cooling systems at Fukushima Dai-ichi nuclear power plant. The subsequent venting operation and hydrogen explosion resulted in a large radioactive nuclide emission from reactor containers into the environment. Here, we collected environmental samples such as soil, plant species, and water on April 10, 2011, in front of the power plant main gate as well as 35 km away in Iitate village, and observed gamma-rays with a Ge(Li) semiconductor detector. We observed activation products (239Np and 59Fe) and fission products (131I, 134Cs (133Cs), 137Cs, 110mAg (109Ag), 132Te, 132I, 140Ba, 140La, 91Sr, 91Y, 95Zr, and 95Nb). 239Np is the parent nuclide of 239Pu; 59Fe are presumably activation products of 58Fe obtained by corrosion of cooling pipes. The results show that these activation and fission products, diffused within a month of the accident.