4/28/2012

「忙しいママにもわかるICRP勧告書」を再開します。

久々に、ICRPの勧告書(Publication 111)を読み進めます。興味もある方は、その6までを読み返してください。 (勧告書へのリンクは、その1にあります。)

日本でも、ICRPの文書は、緊急時に許容できる放射線量の暫定値に関する論議に、よく引用されているようです。でも、私が、これまで読んだところでは、この勧告書の主要のポイントは、暫定値のレベルの設定だけはありません。もちろん、それもあるのですが、東電福島第一原発津事故のように、放射汚染被害が広域にしかも長期にわたるという事態に、どういうことを考慮して対処すべきかという、正解のないプロセスについての語る所が大きいと思います。

一部に批判されているほど産業寄りで住民への危険を過小評価した勧告とは、言い切れないと思うのです。(無論そう批判される理由も十分にあります。)でも、現在は、むしろ産業寄りと批判されるICRPの勧告書さえ、都合の悪いところは無視しているような日本政府の対応の方が目に付きます。

で、私からみたICRPの勧告書の意図するところに焦点をあてながら、また、これから少しづつまとめていこうと思います。 忙しいママのために書きます。でも、私の言葉を鵜呑みにしないでくださいね。ここは、専門家でもない黄金熊が綴る感想文みたいなものなのですから。まえにも、書いたとおり、ほかにも、色々情報集めて、そして限られた情報と知りながら、自分の責任で判断する。そうするしかありません。

話が脱線しますが、危機管理とは、そういうことです。危機的緊急事態においては、全部の情報が入るわけでないし、全て正しく理解できるわけでもない 不完全な情報と不完全の理解の中で、不確実な判断をするしかないのです。 確実性をもとめたら、なにも判断できません。でも、確実性を求めて判断しなければ、判断しないという状態が、結果的に自分が選んだ判断ということになります。 わたしたちに出来ることは、自分の最善を尽くすこと。自分の信頼する人と相談すること。そして、最後は自分で頭で考えて決断し、あとは、神さまに結果をゆだねること。それぐらいです。でも、それだけでも、結構難しいです。

で、次回は、ICRPのpublicaiton 111の第三章を、読み進めます。(の、予定)

4/17/2012

米国上院議員からみた東電福一の現状

先週、米国上院議員のワイデン氏 (Ron Wyden、オレゴン州代表で、上院エネルギー委員会メンバー)が、東電福一原発を視察して、次のようなプレスリリースを発表しました。

http://www.wyden.senate.gov/news/press-releases/after-tour-of-fukushima-nuclear-power-station-wyden-says-situation-worse-than-reported 

今後の原子エネルギーの活用と技術開発のために、日本の原発の事故から学ぼうという目的に視察に行ったところが、現場の被害の甚大が想像以上のものであったと報告しています。とくに、いつまた大地震に見舞われるかもしれない危うい状態が続く中、現在も膨大な量の使用済み燃料棒が破損した建物の中の燃料プールに残されていることに非常な危機感をもったようです。 特に4号機について言及しています。また、東電が12月に発表した収束計画が不十分であると指摘しています。 そして、ワイデン氏は、藤崎駐米大使、クリントン外相、チュウエネルギー相、NRCジャッコ委員長に、彼の危惧を表明し収束にむけて国際的援助をするべきという書簡をおくっています。 ワイデン氏の意見は、福一の国有化が必要だという、先日の私のブログにのべた意見とも呼応したものだとおもいます。

この福一の現状については、ワイデン氏にいわれるまでもなく、米国政府は熟知していると思います。 ただ、いろいろな政治的な配慮もあるし、表で騒いでないだけのことでしょう。ここで、ワイデン氏の声明に意味があるのは、彼は、この問題をあえて明るみにしようとしているところです。
  
藤崎大使に送った手紙の中では、次のようにのべています。

“…   The scope of damage to the plants and to the surrounding area was far beyond what I expected and the scope of the challenges to the utility owner, the government of Japan, and to the people of the region are daunting.  The precarious status of the Fukushima Daiichi nuclear units and the risk presented by the enormous inventory of radioactive materials and spent fuel in the event of further earthquake threats should be of concern to all and a focus of greater international support and assistance. …”

黄金熊意訳: 「福一原発と周辺地域の被害は、私の想像をはるかに上回るものだった。 東電、日本政府、そして福一原発地域の住民が向き合っている課題は、甚大である。 いまだ不安定な福島第一の原子炉の実態、また、さらなる地震によって放出されかもしれない大量の放射物質と使用済み燃料によるリスク、これらは誰しも危惧すべきことである。 国際的支援と援助を考えるべきである。」

“ …. TEPCO’s December 21, 2011 remediation road map proposes to take up to ten years to complete spent fuel removal from all the pools on the site. Given the compromised nature of these structures due to the events of March 11th, this schedule carries extraordinary and continuing risk if further severe seismic events were to occur.  The true earthquake risk for the site was seriously underestimated and unresolved. …”

黄金熊意訳:「東電が、昨年12月21日に発表してた行程表のよれば、使用済み燃料棒をすべて燃料プールから取り出すのに10年かけるとしている。しかし、3・11震災と一連の事故によって構造物は破されて脆くなっており、さらなる地震などが起こる可能性を考えれば、東電の示した10年かけて燃料棒を取り出すという案では、尋常ではないリスクを継続することとなる。 福一の抱える危険は、対処方も未解決であるばかりでなく、そのリスクへの過小評価が深刻である。」

彼が、英文で使っている表現は、緊張感にみちたものです。政治家がここまで強い言葉をつかうことは、普通ありません。米国の上院議員の立場で、自分に政治的に利益にもならないことで、他国の政策にここまでつっこんで書くのは異例です。たとえば、 "extraordinary and continuing risk”とか、The true earthquake risk for the site was seriously underestimated and unresolved.” と、いった表現は、政治的な意図があるというより、彼が事態をどれだけ深刻視しているかいうことの表れだとおもいます。 この書簡は、福一にいって、たまげて帰ってきたという感じに、書かれています。彼は、早速今日(4/17)は、ニュース番組にでて、早速福島第一は、日本は、世界中の英知をあつめて早急に解決するべきだと述べています。(表では言えないでしょうが、陰では、アメリカ政府にさっさと介入しろと働きかけているのかなあとおもいます。それか、裏で働きかけてもなかなか聞いてもらえないので、マスコミにでたとか。)

ワイデン氏は、米国でも福島からの放射物質のファールアウトが特に高かったとされるオレゴン州を議員 です。今度また大事故があれば地元にも少なからず影響が出るのは確かですから、他人事としてほっと置けないないでしょう。そういう州民の声が、彼の元にと どいているのかもしれません。

それにしても、彼が、このような考えにいたったのは、現場の人から率直な説明をうけたからなのでしょうか。 (おそらく、非常な危険に身をさらしながら収束につとめる現場のスタッフが、現実を一番良く知っているとおもいます。) それとも、福一を心配する人たちが海外でもいろいろ働きかけている結果なのでしょうか。 どちらにしても、海外からの視察人から、これだけ、はっきり福一はいまだ危険だと判断される現場の実態は、周辺の住民には十分知らされているのでしょうか。 本当に、この状態で、近辺住民を、しかも高汚染地に戻してよいのでしょうか。 

4/13/2012

瓦礫広域処理は、絶対に、いけません。

ひさびさに、爆発しそうになっているので、吐かせていただきます。(最近かたいエントリーが増えたけど, もともとこのブログ自分の気持ちのはけ口のために始めたような日記だったんで。。。)

瓦礫処理広域処理を、全国でやる必要はない。とくに、遠く離れてた非汚染地で処理する必要は無い。瓦礫引き受けした地域の環境が汚染される危険が非常に大である。 被災地の援助にならない。 こんなこと、ちょっと調べて、普通に考えればわかることです。 わからない方は、ここに(http://yushi.rederio.org/gareki)大変よくまとめてくださって方たちがいますから、見てください。

ところが、政府は、9億円という国費を、瓦礫広域処理推進の広告と啓蒙活動に使っています。そのため、多くの国民が、瓦礫を被災地から遠く離れた全国各地の自治体で引き受けることが絆であり、被災地援助になるという政府のプロパガンダに、惑わされています。

もちろん、騙されていない人も、大勢いて、瓦礫広域処理に反対の声をあげてます。だって、この問題は、自分たちの健康や地元の産業に関わる問題ですから。そういう人たちの、ほとんどは、普通の市民です。 上に記したとおり、洗脳でもされて無い限り、普通の人なら、ちょっと考えれば当たり前の結論として、広域瓦礫処理はするべきでないし,する必要もないというところに、到達するからです。原発推進とか脱原発とか立場とは関係ありません。はっきりいって、小学生の高学年でも分かる程度の話のことなのです。

じゃあ、なんで、情報も知識もある政府や官僚は、子供でも分かる道理が分からないのか。なぜ、そこまで広域瓦礫処理にこだわるのか。また、同じように情報もあるだろうし分別もありそうなオピニオンリーダーの中にも、もっと大声で瓦礫反対を唱える人がいてもいいのにと思うのに、数が少ないのか、またはマスコミがとりあげないのか。 みんな忙しくて、無知なだけなのでしょうか。政府の広報をそのまま信じているのでしょうか。 ニュース性がないとでもいうのでしょうか。 わたしも、はじめは、政府や役人も専門家もマスコミも、単に勘違いしているのかと思ってましたが、どうやらそうでは、ないようです。

要は利権のようです。廃棄物処理産業にかかわる利権です。関連業界者だけでなく受け入れ自治体にもお金が落ちますし、おいしい話というわけです。 そこには、やくざだって関わっています。 政治家や著名人は、利権に惑わされて(又は利権者に頼まれて)瓦礫処理推進に走っているか、脅しが怖いからだまっているか、まあ、そのどちらかだと思います。 事情が本当にわかっているのに、被災地の救援につながるとおめでたく思っている人は、少ないと思います。被災地応援は口実でしかないと薄々知っていても目をそらしているのだと思います。

黄金熊は、被災地が実家ですから、被災地支援を食い物にする利権者や政治家たちに、反吐が出ます。やくざが怖くて反対の声明をあげられないような政治家や著名人は、がっかりです。だったら、偉そうに人の前に立つなといいたいです。

もちろん、おめでたく瓦礫処理が被災地支援につながると本当に思っている人もいるのでしょうし、低量の放射物質が拡散されてもそれほどたいしたことではなく許容できる範囲だと信じている人もいるでしょう。でも、その影にかくれている、事情を知った上でも瓦礫拡散反対の声をあげる勇気のない人たちや、事情を知らぬふりして利権のために瓦礫拡散を推進する人たちは、結局 被災地のことなど真剣に考えてもいなければ、汚染拡大に手を染めることもいとわない日本の国土の裏切り者ではないのですか。

一市民にしか過ぎない黄金熊は、日本のリーダーたち(政治家、有名人、専門家)の多くには、失望させられます。(頑張っている誠意のあるリーダーたちもいらっしゃるのです、数が少なすぎますね。彼らを、応援しましょう。)影響力のある立場の方たちは、馬鹿でもないしそこそこの良心もあるはずだと思うので、余計に腹がたちます。でも、まじめに生きている一市民たちが、あちこちで、立ち上がっています。それをみて、日本にはまだ希望があるかなと、元気づけられています。

4/01/2012

今、緊急にすべきこと (その1):F1の国有化

東電が一兆円もの公的資金注入を要請したことにより、東電が実質上国有化されるだろうと話題になっている。原発事故の収束も政府の下で進むことになるだろうと報道されている。これまでの東電の失態を許してきた現政権に、まかせられるのか、なんとも心もとない。が、とりあえず前進するためには、今の東電の経営陣に任せておくわけには行かないとはいうのは自明だ。

それにしても、この国有化の話題は、ピントはずれにような気がしてならない。 国費で救済される東電自体が国民の監視下に入るというのは当然であるが、それと、福一の管理は、別次元の問題であると思う。 わたしが心配するのは、東電の実質上国有化という中で、電力会社の経営や補償の問題など政治問題に発展しやすい課題ばかりに気をとられ、総力をあげて取り組むべき事故収束に集中できなくなるのではないかということだ。政府の収束宣言を信じている馬鹿はいない。 先日のブログに書いたとおり、東電福一原発の現状は、非常に厳しい。いや、「厳しい」なんて言い方では、甘すぎるだろう。米国で言えばキューバ危機のレベルが、持続している状態だ。事故収束には、日本の命運が、かかっている。いや、北半球の命運がかかっているとさえ、いえるかもしれない。 万万が一にも、収束できないという結果は許されない。 

つまり、国費を注入するのだから国がもっと介入しよう云々の問題ではないのだ。F1事故は、一私企業が責任をもてるレベルをとっくに超えている。エクソンやBPが引き起こした環境汚染事故などと比較にもならないレベルである。 日本国が総力を挙げなければ、収束できないかもしれない。まず今緊急にすべきは、電力会社としての東電の国有化ではなく、事実上お手上げ状態の福一原発という発電所を国の管理下におき、国が事故収束の舵取りをするということであると思う。

Nature誌の投稿で、衆議院平智之氏らが、福一原発は国有化されなければ事故の真相の解明さえ進まないだろうと警鐘していたが、まったく同意する。(日本語版は、Nature Japanで、ここで、読めます。) まずは、原発事故収束の責任は、否が応でも、日本国がとらなければならないということを自覚しなければならない。 それは、政府が、官僚が、政治家が、ということだけではなく、日本国民が責任を負うということだ。 どんなにか東電のせいですまされたら良いことかと思う。でも、この一年いろいろ情報を集めてみてけれど、事故の実態は考えたくないほど深刻だと思うようになった。東電の実質上国有化の是非や形態を論議する中で、事故収束も見直そうなどと、悠長なことをいっている場合ではないのではないか。