10/11/2012

米軍退役兵の補償にみる被曝のリスクの考え方(1)

最近、米軍関係のサイトを見ていて、想定される健康被害について考えさせることがありました。

米国内でも原発産業の関係者からは、ことさら被曝の危険はたいしたこと無いといわんばかりのPRが多いです。核兵器を扱ってきた米軍の方が、被曝の危険についてはフランクなような気がします。なにしろ、低線量どころでなく、高線量の被曝で「ただちに」兵士や市民が命を落とすシナリオや、ダーティボムといわれる核汚染を目的とした爆弾が米国本土に仕掛けられるシナリオを、十分ありうる脅威として想定してきたのが米軍です。軍にとっては、放射能は金儲けの副産物ではなく、向き合わなければならない危険物でしかないわけですから、そもそも核にたいする意識が違うのかもしれません。米軍は、核を扱うことに伴うを危険性については一番情報を持っている機関であり、対策を考えている機関ともいえます。

そのような米軍は、現役・退役兵の健康管理には被曝による健康被害の可能性を考慮しています。で、今回は、米軍で被曝した(と思われる)退役兵への対応について、少し調べてみました。(ここでまとめた情報は、すべてネット上で公開されており、誰でも見れるものばかりです。)アメリカの退役兵は、軍役に関わる負傷や病気があった場合、生涯、障害者手当や医療サービスを受けることができる制度があります。 この制度から、米軍が、疾患と被曝と関連をどのように見ているのか分かります。

で、先ずは、まとめの2点。(詳細は、次回に掲載します。)

1)第2次世界大戦時・冷戦中に、いわゆる放射線リスク任務(radiation-risk activity)に関わった米兵(広島・長崎占領兵など)は、健康状態に関わらず被曝専門の医療診断が受けられ、退役兵の医療保険制度に参加することが出来ます(国民健康保険などない米国においては、医療へのアクセスは大変に貴重な扶助です)。 また、放射線リスク任務についた退役兵には、様々な癌が任務に由来する推定疾患(presumptive disease)として認められており、各当する癌にかかった場合、本人や遺族に障害者手当が出ます。因果関係を証明する必要はありません。

2)湾岸戦争・アフガニスタン・イラク戦争などで、劣化ウランに曝された兵や、さらに、福島原発事故後2ヶ月間の間に日本にいた者(先日のブログ参照)などについても、ケースごとの審査で認定されれば、被曝手当てを受けることができます。ケースバイケースの審査対象になる疾患は、癌だけではありません。甲状腺の結節性疾患や白内障も含みます。

私は、これを以下のように理解しています。被曝による被害のエキスパートとしては最先端にある米軍は、低線量被曝によって癌などの様々な疾患が引き起こされることを否定していない。その可能性は低いとしながらも、想定している、といっていいだろう。原発事故当時(20113月から5月にかけて)日本に滞在していた関係者は、被曝したとみなされている。制度上は、劣化ウランなどで被曝した者と同様の扱い。 

このような情報を、参考にするか、しないか、また、どう解釈すべきか。正解なんてありません。でも、自分が考える材料になると思います。  

次回は、想定されている被曝のリスクについて、もう少し詳しく見てみます。