11/13/2012

規制値以下なら、安心?

東電福一原発事故後、東北・関東を中心に、農作物や海産物の放射性物質による汚染が心配されています。日本政府が定めた食品などの規制値は、現時点(201211月)で、以下の通りです(参考資料は、注1)。

一般食品        キロあたり、100 ベクレル
乳児用食品     キロあたり、50 ベクレル
牛乳                キロあたり、50 ベクレル
飲料水            キロあたり、10 ベクレル

事故後しばらくは、食品の暫定規制値が、キロあたり500ベクレル (牛乳や水は200ベクレル)だったことを思えば、規制値はずい分厳しくなり、安全になったかのようにも思えます。しかし、安心して、原発事故以前と変わらない食生活を続けていいのでしょうか。今回は、このことについて、考えて見ます。

忙しいママのために、結論を先にいうと、一日セシウム摂取量を、たった1ベクレルに抑えたとしても、事故前の一日あたりセシウム摂取量の何十倍にあたる量を、取り入れる事になります。規制値以下だからということで安心するより、体内に取り込む放射性物質は少なければ少ないほうがいいのだということを忘れずに、選択できるなら、1ベクレルでも汚染の少ない食生活を心がけるのが賢明です。

さて本題。

まずは、原発事故の以前、日本人は、どれくらい実際に放射性物質の摂取していたのでしょうか。実は、事故以前から日本の日常食に含まれていたセシウムの摂取量は、ちゃんと国税使って、調査されていました。2000年の全国調査では、日常食からのセシウム137の摂取量は一人一日当たり平均 0.03ベクレル。2007年調査では、平均0.02セシウム134は原発事故以前のこのころのCs134は、ほぼゼロと仮定していいと思います。(参考資料は、注2)

では、事故以前, 日常食は一体どれだけ汚染されていたのでしょうか? 調査した日常食の平均質量が報告されていないようなので、大人の一日の食事量を、少なめに見積もって1キロとして考えてみます。一日0.03 ベクレルを摂取していたとすると、日常食のセシウム汚染はキロあたり0.03ベクレルだったということです。しかし、実際には、一日の食事量は、2キロぐらいでしょう。もし、大人の日常食の量を一日2キロとして計算すると、事故以前は、日常食は、キロあたり 0.015 ベクレルほどセシウムで汚染されていたという事になります。もちろん、事故以前も食品によって汚染が高いもの低いものと差はありましたが、平均すれば、日常食は、キロ当たり0.010.03ベクレルぐらいのセシウム汚染がされてたと、考えていいと思います。 それと比較すれば、現在の100ベクレルという規制値は、決して厳しい水準ではありません。 いかに東北関東を中心に、食材が汚染されたかということです。

もう少し具体的に、考えてみます。

もし、現行の規制値限界である、キロあたり100ベクレルに汚染されている食品を、一日1キロ食べたら、それだけで100ベクレル摂取することになります。 一日100ベクレルという数値を、 事故以前の一日0.03ベクレルと、比べてみます。これは、事故以前の3333倍いう値です。単純計算すれば、事故以前ならば9年分に相当するセシウムをたった一日で摂取することになります。(ここでは、生物的半減期については、ちょっと脇において、単純に値の大きさの比較してます。)

日本人の主食である米の汚染は、大変気になります。現在、キロ当たり100ベクレル以下の米は、「安全」だとして、流通しています。仮に、キロあたり10ベクレルのセシウム汚染されている米を食べるとします (規制値の10分の1というレベルです)。 この米を、一日一合(=150グラム)食べると、米からの一日のセシウムの摂取量は1.5ベクレルです。 米だけで、事故前の一日の摂取量の50倍程度になってしまいます。

現在、汚染地であっても、水や食材や外食に気をつかい、日常食をキロあたりセシウムで3ベクトルで抑えることは、可能かとおもいます。それでも、一日の食事量が1キロ以上とすれば、セシウム摂取量は、事故前と比べたら恐らく百倍以上になっていることになります。

もちろん、ある人が、以前と比べて百倍も千倍もの放射性セシウムを食事から摂取をするようになってしまったからといって、必ずしもその人の健康が損なわれるとは限りません。 実際に、以前と比べて百倍、千倍もの放射性物質を摂取するようになった場合、身体にどんな影響がどれだけどんな確率でおこるのか、意見が分かれるところです。ただし、以前と比べて、その人が健康被害を受けるリスクが高くなったことは、確実ですし、その人の体内に取り込まれた放射性物質が、まわりのDNAを傷つけるのも確実です。 

前にも書きましたが、被曝した住民の間で、被曝が原因で健康被害がでてくるのも確実です。これは、科学的にいえることです。 ただ、どの人が、いつどんな健康被害に見舞われるかどうかが、確定できないだけです。また、健康被害に見舞われる確率は個人の被曝量と比例している(閾値はない)というのが、定説です。つまり、被曝量は少なければ、少ないほどいい。

防護の観点からすれば、なるだけリスクを低く抑えるのが賢明です。選択できるなら、1ベクレルでも少ないほうがいいのです。食材や外食に気をつかい、毎日の食事からの内部被曝の最小化を目指すのは、妥当な対策です。 東北や関東に生活し、お子さんがいるなら、なおさらです。  なるだけ、食事からの汚染は、できるだけ事故以前のレベルをめざしましょう。 ちょっとの気遣いが、大きな違いになります。 


汚染された物を毎日食べ続ければ、身体のなかで、放射性物質は累積していきます。 次回は、生物的半減期と内部被曝量について、書いてみようと思います。


注1: 現時点(2012年11月)で、大豆の規制値はまだ500Bq/kg。流通している加工品などについても、暫定値500Bq/kgが当てはまる場合もあります。詳しくは、http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201204/3.html を参照してください。

注2: 事故故以前の日本人のセシウム摂取量の資料としては、環境放射能調査研究成果論文抄録、http://bit.ly/eZQsKO (日常食調査は2007以前参照) や、 Radioactivity Survey Data in Japan, http://bit.ly/kJw3j4  などを、ご覧になってください。