4/17/2012

米国上院議員からみた東電福一の現状

先週、米国上院議員のワイデン氏 (Ron Wyden、オレゴン州代表で、上院エネルギー委員会メンバー)が、東電福一原発を視察して、次のようなプレスリリースを発表しました。

http://www.wyden.senate.gov/news/press-releases/after-tour-of-fukushima-nuclear-power-station-wyden-says-situation-worse-than-reported 

今後の原子エネルギーの活用と技術開発のために、日本の原発の事故から学ぼうという目的に視察に行ったところが、現場の被害の甚大が想像以上のものであったと報告しています。とくに、いつまた大地震に見舞われるかもしれない危うい状態が続く中、現在も膨大な量の使用済み燃料棒が破損した建物の中の燃料プールに残されていることに非常な危機感をもったようです。 特に4号機について言及しています。また、東電が12月に発表した収束計画が不十分であると指摘しています。 そして、ワイデン氏は、藤崎駐米大使、クリントン外相、チュウエネルギー相、NRCジャッコ委員長に、彼の危惧を表明し収束にむけて国際的援助をするべきという書簡をおくっています。 ワイデン氏の意見は、福一の国有化が必要だという、先日の私のブログにのべた意見とも呼応したものだとおもいます。

この福一の現状については、ワイデン氏にいわれるまでもなく、米国政府は熟知していると思います。 ただ、いろいろな政治的な配慮もあるし、表で騒いでないだけのことでしょう。ここで、ワイデン氏の声明に意味があるのは、彼は、この問題をあえて明るみにしようとしているところです。
  
藤崎大使に送った手紙の中では、次のようにのべています。

“…   The scope of damage to the plants and to the surrounding area was far beyond what I expected and the scope of the challenges to the utility owner, the government of Japan, and to the people of the region are daunting.  The precarious status of the Fukushima Daiichi nuclear units and the risk presented by the enormous inventory of radioactive materials and spent fuel in the event of further earthquake threats should be of concern to all and a focus of greater international support and assistance. …”

黄金熊意訳: 「福一原発と周辺地域の被害は、私の想像をはるかに上回るものだった。 東電、日本政府、そして福一原発地域の住民が向き合っている課題は、甚大である。 いまだ不安定な福島第一の原子炉の実態、また、さらなる地震によって放出されかもしれない大量の放射物質と使用済み燃料によるリスク、これらは誰しも危惧すべきことである。 国際的支援と援助を考えるべきである。」

“ …. TEPCO’s December 21, 2011 remediation road map proposes to take up to ten years to complete spent fuel removal from all the pools on the site. Given the compromised nature of these structures due to the events of March 11th, this schedule carries extraordinary and continuing risk if further severe seismic events were to occur.  The true earthquake risk for the site was seriously underestimated and unresolved. …”

黄金熊意訳:「東電が、昨年12月21日に発表してた行程表のよれば、使用済み燃料棒をすべて燃料プールから取り出すのに10年かけるとしている。しかし、3・11震災と一連の事故によって構造物は破されて脆くなっており、さらなる地震などが起こる可能性を考えれば、東電の示した10年かけて燃料棒を取り出すという案では、尋常ではないリスクを継続することとなる。 福一の抱える危険は、対処方も未解決であるばかりでなく、そのリスクへの過小評価が深刻である。」

彼が、英文で使っている表現は、緊張感にみちたものです。政治家がここまで強い言葉をつかうことは、普通ありません。米国の上院議員の立場で、自分に政治的に利益にもならないことで、他国の政策にここまでつっこんで書くのは異例です。たとえば、 "extraordinary and continuing risk”とか、The true earthquake risk for the site was seriously underestimated and unresolved.” と、いった表現は、政治的な意図があるというより、彼が事態をどれだけ深刻視しているかいうことの表れだとおもいます。 この書簡は、福一にいって、たまげて帰ってきたという感じに、書かれています。彼は、早速今日(4/17)は、ニュース番組にでて、早速福島第一は、日本は、世界中の英知をあつめて早急に解決するべきだと述べています。(表では言えないでしょうが、陰では、アメリカ政府にさっさと介入しろと働きかけているのかなあとおもいます。それか、裏で働きかけてもなかなか聞いてもらえないので、マスコミにでたとか。)

ワイデン氏は、米国でも福島からの放射物質のファールアウトが特に高かったとされるオレゴン州を議員 です。今度また大事故があれば地元にも少なからず影響が出るのは確かですから、他人事としてほっと置けないないでしょう。そういう州民の声が、彼の元にと どいているのかもしれません。

それにしても、彼が、このような考えにいたったのは、現場の人から率直な説明をうけたからなのでしょうか。 (おそらく、非常な危険に身をさらしながら収束につとめる現場のスタッフが、現実を一番良く知っているとおもいます。) それとも、福一を心配する人たちが海外でもいろいろ働きかけている結果なのでしょうか。 どちらにしても、海外からの視察人から、これだけ、はっきり福一はいまだ危険だと判断される現場の実態は、周辺の住民には十分知らされているのでしょうか。 本当に、この状態で、近辺住民を、しかも高汚染地に戻してよいのでしょうか。