2/07/2012

IAEA、ストレステストについて。


また、随分日が空いてしまいましたが、再開します。仕事が年末までいそがしかったのが、主な理由ですが、それについては、また後で書くこととします。

あっという間に、私を取り囲む世界がすっかり変わった2011年は、おわり、また3月が訪れようとしてます。世界の誰も信じない、冷温停止を宣言して、日本政府が笑いものになったのが、2011年の終わりでした。正確には、「冷温停止状態」というわけの分からない造語を作って、「冷温停止状態」宣言したわけですが、これは、あまりにも馬鹿馬鹿しいので、ただひたすら唖然としました。日本政府や東電って、そこまで落ちるのか、と呆れたのは、黄金熊だけではなかったはず。

それだけではない。政府は、原発再稼動を正当化するために、ストレステストなるものを、考案し実施しました。これも、「冷戦停止状態」に負けずとも劣らない、妙案です。(実態は、非現実的なシュミレーションによって、原発は運転しても安全と、アピールするものです。) でも、さすがに、日本政府主導のストレステストなるものでは、誰も信用してくれないだろうとは想像がついたらしく、IAEAにお出ましになったもらい、ストレステストをIAEAお墨尽きということにしようと、もくろんだようです。まずは、国内で各分野の専門家と国民(とくに原発周辺住民)を含めて徹底的な論議を行ういう当たり前の過程はさけて、日本人は国際機関っていう名のつくものに弱いからとこれで丸め込めるといわんばかりの、国民をなめきったような対応ですね。 


そこで、IAEAについてさっとおさらい。 International Atomic Energy Agency(IAEA)は、核兵器開発の監視がメインの国際機関です。その本の片手間に、原子力エネルギーの推進もしている機関です。ここで、大切なのは、IAEAは、原子力の平和利用(つまり、原子力発電)を、推進することを目的として、設立した機関だということです。
以下は、IAEAの定款(第2条 目的)です。
The Statute of the IAEA (ARTICLE II: Objectives)
The Agency shall seek to accelerate and enlarge the contribution of atomic energy to peace, health and prosperity throughout the world. It shall ensure, so far as it is able, that assistance provided by it or at its request or under its supervision or control is not used in such a way as to further any military purpose.

これによれば、IAEAは、核エネルギーを推進拡大しようっていうのが、大前提にあるのです。だから、そういう機関が、原子力発電を規制をすることは、基本的にできません。 IAEAにとっては核エネルギー無しで、豊かな世界を作るという選択はないのです。 IAEAにせいぜい出来るのは、核エネルギーを推進をなるだけ妨げないようにしつつ、安全を出来るだけ確保するように努める、ぐらいです。 安全を確保することを目的として、その枠内で核エネルギーを推進をかんがえる というのではないのです。ほんのちょっとの違いのように、聞こえますが、全然違います。 まず、原発ありき、なのですから。 だから、そういう、IAEAのお墨がついても、安全を第一としてほしい住民には、あまり意味がない。 そう、考えるのが妥当かと思います。


で、ストレステストは、一応、IAEAのお墨をつけてもらったわけですが、その、IAEAでさえ、手放しに評価しているわけではなく、住民の意見を反映させることなどを盛り込んだ勧告を同時に出しています。 政府と東電は、とにかく、これで、国際的にもOKしてもらったってことにして、原発の再稼動を強行しようという感じ。この場に及んでも、根本的に、福一の事故の意味を理解していないのか、と正気を疑います。 




追記: ストレステストの意味のなさについては、外国特派員協会での記者会見で、後藤政志氏らが、分かり易く解説なさっています。(日本語です)。 なぜ、これが、意味のないテストなのか技術的論理的根拠を、知りたい方は、どうぞ。


Goto & Ino, "Is the Japanese Government Cheating on its NPP Stress Tests?"