10/11/2011

忙しいママにもわかるICRP勧告書 -その5


今回のポイント: 食べ物による被曝では、たとえ少量でも、毎日長く続けば、危険レベルとなる。塵も積もれば山となる、です。

ICRPの勧告書は、放射汚染が広大な地域に及んでしまい、住民はそこに長く住まざるを得ないという事態を想定してます。まさに今回の福島第一の原発事故のような事態を想定して、書かれています。このような場合 問題になるのは、汚染された食物や水からの長期的な被曝です。なにしろ、広域汚染というのは、放射物質が大変に広い範囲で農作地にも水源にも降り注いでしまうという事態ですから、そこの住民は、何も手をうたなければ、多かれ少なかれ汚染されたものを飲食せざるを得ないことになってしまいます。しかも、その状況が、何年も続くという事態です。 

ICRPの勧告書では、汚染された食べ物や飲み水を毎日少しづつ取り入れた場合と、一時に多く取り入れた場合では、同じ放射線総量でも、内部被曝量の大きな差があることを指摘しています。たとえば、セシウム(Cs137)を 毎日1 ベクトル、1000日続けて身体に取り入れた場合と、初めに一度に1000ベクトルを取り入れて1000日たった場合をくらべてみます。

身体に取り込まれたセシウムは、自然に身体から排除されます。しかし排除するのに時間がかかるため、毎日1ベクトルでも、汚染されたものを毎日食べれば、放射物質は身体に蓄積されていきます。 反対に、一度に1000ベクトルも食べてしまった人でも、その後、汚染された物を食べなければ、内部被曝量は徐々に減っていきます。IRCPによれば、1年ぐらいたつと、毎日1ベクトル食べて1年たった人と、身体にとりこまれた放射物質量が、同じくらいになります。さらに、2年たつと、その後汚染された物を飲食しなければ、はじめに受けた1000ベクトル分の放射物質は、ほとんどがすべて身体から排出されます。ところが、毎日1ベクトル食べ続けた場合は、一年半もすると体内にとどまる放射物質は150ベクトル前後となりそれ以後変わらなくなります。体内に被曝量が、100ベクトルでも、身体に異常が見られるという報告もあるそうです。(出典は探し中です。)  毎日少しづつだから大丈夫って言う保証は、ないのです。現在の、日本のゆるーい食物の安全基準を考えると、内部被曝が、大きな問題となるでしょう。

ICRPの勧告書では、広域汚染地の住民は、毎日の食事が汚染されたしまったことでも被曝するし、時折ことさら汚染の高い食事をすることによっても被曝すると、警告しています。気をつけてなければ、一日に数百ベクトルも摂取していまいます。チェルノボリ事故では、20年たっても、汚染地域の大人は、平均して10-20ベクトルの放射物質を毎日摂取しており、その上で、時折特に汚染の高いもの(野生のきのこやベリーなど)を口にすることで、数百ベクトルも摂取していると、勧告書は報告しています。ICRPのよれば、この程度の摂取であれば年間、食時による内部被曝は0.1ミリシーベルト(0.1mSV)ぐらいで何とかおさまります。けれど、あまり気をつけてない人は、毎日の摂取量が数百ベクトルに上ることも、考えられ、その場合は、食事による内部被曝だけで、年間の被曝量が数ミリシーベルトに及んでしまいます。

私の解釈はこうです。どんなに 気を配っていても、 たまに、汚染が高いものを口にしてしまうことは、(特に関東以北では)多分さけられないでしょう。だからこそ、毎日の食事からの被曝をなるべく少なくする。塵も積もれば山となるからです。恒常的に内部被曝のレベルが上がってしまうのを、極力さけたいからです。それには、汚染地の外から食物を手に入れる、汚染が少ないことを確認できるものだけ食べるなど、日々、努力しなければなりません。 日本政府は、食品は1kgあたり500ベクトル[2012年4月以降は100ベクトルになりました。それでも緩い!」でもOKいっているわけですから、そのような基準で市場に出回っている食べ物を、気をつけずに食べていれば、内部被曝が高くなってしまう可能性が大だとおもいます。 気は疲れるし、お金もかかると思います。 でも、今年だけは、気をひきめして、日本の皆さんには、特にお子さんのいる家庭では、食事注意、頑張ってほしいです。